ワクチン接種関連肩関節障害

エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、多くのワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)と思われる患者様の治療を担当しています。
その診療経験の中で、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)には2つのタイプがあり、特徴的なMRI画像所見を呈することが判明してきました。さらに2つのタイプに有効な治療法も判明し、良好な治療成績となっていますので、情報を公開いたします。

ワクチン接種関連肩関節障害(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration: SIRVA(シルバ))

新型コロナウイルスに対するワクチンを接種した後に、肩関節の痛みや可動域制限などの障害が出ることが世界的に報告されています。
これが、ワクチン接種関連肩関節障害(Shoulder Injury Related to Vaccine Administration: SIRVA(シルバ))です。

ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)に対する公式発表

現在、厚生労働省や大学病院などの医療研究機関からは、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)に対する明確な答申が出ていないため、病態や治療法は不明であり、各医療機関が独自の視点で対応・治療を行っていることが現状です。

2つのタイプのワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA):感染タイプと免疫異常タイプ

エメラルド整形外科疼痛クリニックでのワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)ワクチン接種関連運動器障害(MARVA)の診断・治療経験から、
・抗生剤が良く効く:感染タイプ
・抗生剤が全く効かなく、漢方薬による免疫異常の改善が奏功する:免疫異常タイプ

の2つのタイプがあることがわかりました。

そのため、これはあくまでエメラルド整形外科疼痛クリニックの一私見ですが、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)ワクチン接種関連運動器障害(MARVA)には感染タイプと免疫異常タイプという2つのタイプがあり、タイプに応じて治療法を変える必要があると考えています。

エメラルド整形外科疼痛クリニックで行っている検査法

検査内容と評価内容

エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、肩関節のほか、肘関節、手関節の障害、化膿性腱鞘炎などが疑われる患者様が来院された場合には、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)だけではなく、ワクチン接種関連運動器障害(MARVA)を想定し、化膿性関節炎・化膿性腱鞘炎などの感染性疾患に加え、関節リウマチ・痛風・偽痛風を想定し、検査・治療を行っています。

採血・関節液

  • CRPにより炎症反応を評価
  • リウマチ因子・抗CCP抗体によりリウマチについて評価
  • 抗核抗体により膠原病を評価
  • プロカルシトニンにより重症な感染症の有無を評価
  • 尿酸値により痛風を評価
  • 感染の可能性がかなり高い場合には、静脈血培養検査を施行し、菌血症・敗血症の評価
  • 感染の可能性がかなり高い場合で関節水腫が著明な場合には、関節液穿刺を行い培養検査を施行し、化膿性関節炎の評価

画像検査

  • 単純レントゲン撮影を行い、骨組織の異常を評価
  • MRI撮影を行い、骨組織だけでなく、関節・腱などの軟部組織の異常を評価

エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)ワクチン接種関連運動器障害(MARVA)が強く疑われる患者様に対しては、MRIを用いた評価を行っています。

2つの特徴的なMRI画像所見

エメラルド整形外科疼痛クリニックでは多くの肩関節疾患の患者様やワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)の患者様のMRI検査を行うことで、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)に特徴的なMRI画像所見が判明してきましたので、お伝えします。

特徴1.肩甲下滑液包の水腫

ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)と判断される患者様は、肩甲下滑液包に比較的多くの水腫が貯留していることがあります。
肩甲下滑液包には、通常であればほとんど水腫はありません。
石灰沈着性腱板炎の場合は、肩甲下滑液包に軽度の水腫が貯留します。
腱板の1つである棘上筋腱が断裂した場合にも、肩甲下滑液包にある程度の量の水腫が貯留することがあります。

そのため、石灰沈着性腱板炎や棘上筋腱断裂が否定的で肩甲下滑液包に比較的多くの水腫が貯留することは院長のこれまでの診療経験でほとんどありませんので、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)に特異的と考えています。

SIRVA SAB STIR

肩甲下滑液包:STIR画像

SIRVA SAB T1

肩甲下滑液包:T1強調画像

SIRVA SAB T2

肩甲下滑液包:T2強調画像

特徴2.肩関節(関節窩上腕関節:glenohumeral joint)の水腫

ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)と判断される患者様は、肩関節に比較的多くの水腫が貯留していることがあります。
肩関節には、通常でもごく軽度の水腫があることがありますが、それ以上に貯留することはありません。
変形性肩関節症、関節リウマチ、化膿性肩関節炎では肩関節に水腫が貯留します。

そのため、変形性肩関節症や関節リウマチが採血検査などで否定的で肩関節に比較的多くの水腫が貯留する場合には、ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)の可能性があると考えられます。

SIRVA shoulder STIR

関節窩上腕関節:STIR画像

SIRVA Shoulder T1

節窩上腕関節:T1強調画像

SIRVA Shoulder T2

節窩上腕関節:T2強調画像

感染タイプの治療法

エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、関節や腱組織などの感染が疑われる感染タイプの場合、抗生物質を投与して治療を行っています。

感染タイプに有効性が高い抗生剤

ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)ワクチン接種関連運動器障害(MARVA)感染タイプには、エメラルド整形外科疼痛クリニックの経験上、有効性の高い抗生剤があります。
それが、
・ペントシリン®
・セファメジン®
・ジェニナック®
・クラリス®

です。

ここで特筆すべきことは、上記の抗生剤のうち、クラリス®はあまり整形外科などの運動器疾患の感染に対しては有効ではなく、肺などの呼吸器疾患に有効なことが多いことです。

免疫異常タイプの治療法

免疫異常タイプに有効性が高い漢方薬

免疫異常に対する治療法は、西洋医学では、ステロイド免疫抑制剤などしかありません。
しかし、東洋医学には、免疫異常を改善する作用がある漢方薬があります。
エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、原因不明の炎症が疑われる免疫異常タイプの場合、免疫異常を改善する効力のある漢方薬である、
・補中益気湯
・十味敗毒湯
で治療を行っています。

新型コロナウイルスに罹患した方にも発症しています

ワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)ワクチン接種関連運動器障害(MARVAは、新型コロナウイルスに対するワクチンを接種した方だけではなく、新型コロナウイルに実際に罹患した方にも後遺症として発症していますので、ワクチンだけの問題ではないということをご認識ください。

エメラルド整形外科疼痛クリニックでの治療成績

エメラルド整形外科疼痛クリニックで診断・治療を行ったワクチン接種関連肩関節障害(SIRVA)ワクチン接種関連運動器障害(MARVA)に対する良好な治療成績をご報告します。