診療科より大切なこと

整形外科とペインクリニックに共通する重大な弱点

これまで、痛みに困って受診する際に、整形外科やペインクリニックを選ぶことは正解であるとお伝えしてきました。
また、整形外科やペインクリニックの重大な弱点についてもお伝えしました。

ここで大切なことは、整形外科とペインクリニックの重大な弱点は同じだということです。
それは、東洋医学と心に対するアプローチが苦手だということです。

長い間、心と身体は別のものであるという二元論に基づいて発展してきた西洋医学は、心と体の関係についての理解が未だ十分ではありません
これに対し、約二千年前から心と身体は1つであり互いに関係しあうという心身一如に基づいて発展してきた東洋医学は、心と体の治療が得意です。

国際疼痛学会(IASP)が定義するように痛みには感覚(身体)と情動(心)が関係するため、痛みの治療には、身体に対する治療だけでは不十分であり、心に対する治療も併用する必要があります
そのため、通常の治療(身体だけに対する治療)では良くならない痛み(慢性疼痛)に対しては、心に対するアプローチが必須であり、その治療法の1つが東洋医学です。

以上をまとめると、整形外科とペインクリニックに共通する弱点を解決するには、東洋医学や心に対するアプローチを習得しなければならないということになります。

全ての診療科に共通する重大な弱点

東洋医学や心に対するアプローチを習得しなければならないということは、なにも整形外科やペインクリニックに限った話ではありません。
全ての診療科に当てはまる重大な弱点です。

医師として治療をしていると、他の診療科の処方を日常的に目にすることになります。
それは受診している患者様の治療をする際に、他の診療科から処方されている薬剤の内容を把握することが必要不可欠だからです。
具体的には、併用禁忌といって同時に使用することが禁じられている処方の組み合わせがあるため、薬剤をチェックしないわけにはいきません。

その際に、実際に処方されている処方箋をみると、ほとんどが西洋医学の薬剤のみです。
たまに漢方薬が処方されていることがありますが、内容的には、「腰には牛車腎気丸」、「膝には防己黄耆湯」、「咳をしているから麦門冬湯」、「生理痛には当帰芍薬散」、「うつには半夏厚朴湯」のような一般的に耳にするような処方ばかりです。

実は、東洋医学に精通するようになると、これらの組み合わせでは処方を行わないようになります。
その理由は、効かないからです。
具体的には上記の例だと、「腰にはウチダの八味丸」、「膝には治打撲一方・麻杏薏甘湯」、「咳をしている場合は、ケースバイケース」、「生理痛には治打撲一方・通導散・加味逍遥散」、「うつには認知行動療法」が良く効く組み合わせです。

なお、精神科・心療内科は心に対するアプローチをしているではないか、という指摘があるかもしれません。
しかし、これらの科は薬剤を処方することがほとんどであり、例えばうつ病の治療として世界ではスタンダードになっている認知行動療法は、日本の精神科・心療内科は、保険算定可能であるにもかかわらず、ほとんど施行されていません

このように、全ての診療科において東洋医学や心に対するアプローチが弱点となっていることが現実です。

大切なことは診療科ではなく、医師

前述の全ての診療科において東洋医学や心に対するアプローチが弱点となっていることは、診療科が原因なのでしょうか。

いえ、違います。
もし、診療科の問題ということであれば、例えばAという診療科は東洋医学や心に対するアプローチができないけれど、Bという診療科は東洋医学や心に対するアプローチが皆できるということになります。

前述したように、全ての診療科でできないのですから、これは違います。
答えは、医師です。

例えばAという診療科の多くの医師は東洋医学や心に対するアプローチができないけれど、その診療科のB医師はこれらができることがあります。
それは、このB医師が熱意をもって真摯に医療に取り組み、苦学の結果として医療スキルを体得したということです。

つまり、診療科ではなく、熱意を持った医師が大切です。

安全領域を出ることができる医師が望まれる

安全領域(コンフォートゾーン、セイフティーゾーン)というものがあります。
これは、その人にとって楽で安心して活動できる範囲のことです。
これまでの人生の結果、この安全領域の中で生活を続ければ、大きな失敗はせず大過ない人生を過ごすことができる領域です。
しかし裏を返せば、この安全領域にとどまる限り今まで以上のものは手に入らないということを意味します。

医療にも確固とした安全領域があります
それが、西洋医学で身体のみ、あるいは心のみ治療しか行わないことです。

こうすれば、他の多くの医者と同じですので大きな問題は起きづらく、また、他人から批判されることもありません。
しかし、生涯、他の医者と同じ普通程度の治療しか行うことができません
いわゆる普通の医者にしかなることができません。

なぜ、医者は安全領域を出ないのか

生涯、普通の医者にしかなることができないにも関わらず、なぜ、医者は安全領域を出ないのでしょうか?

それは、医者という職業がそのままで十分安泰だからです。
西洋医学以外を勉強しなくても、大きなミスや問題を起こさなければ、普通の医者として安泰な人生を送ることができます。
熱意をもって、苦労して長い時間をかけて東洋医学や心に対するアプローチを習得しなくても、その医者自身に特に困りません

ただし、そのような医者に治療を受ける患者は、残念ながら普通程度の医療しか受けることはできなくなってしまいます

最も大切なこと、それは医師の熱意

つまり、最も大切なことは、医師として熱意(enthusiasm)を持っているかどうかということになります。
もちろんこれは医療に限らず、全ての仕事について当てはまることです。

熱意のある医師であれば、普通程度の医療に満足することなく、自らの意志で安全領域から外へ飛び出し、東洋医学や心に対するアプローチなどの大いなる可能性を秘めた治療法を習得し、そして日常臨床に活かしていくことでしょう。

まとめ

診療科より大切なこと
・整形外科とペインクリニックに共通する重大な弱点
・全ての診療科に共通する重大な弱点
・大切なことは診療科ではなく、医師
・安全領域を出ることができる医師が望まれる
なぜ、医者は安全領域を出ないの
・最も大切なこと、それは医師の熱意


エメラルド整形外科疼痛クリニック

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