【漢方薬】第35話:「証」以外の漢方薬の選択法:1 症状のある“場所”、2 “臓器”、3 それ以外

今回は今までの流れとは違った漢方薬の選択法をご紹介します。
おそらくこちらの方が西洋医学的ですので、馴染みやすいと思います。
今までのような「証」による選択法ではありません。

1 症状のある“場所”による選択法
経験上、症状のある“場所”に応じて効く可能性が高い漢方薬があります。
①頚部から肩頚
部から肩の症状の場合は、葛根湯(かっこんとう)が効くことが多いです。
②肩
肩が痛い場合には、二朮湯(にじゅつとう)が効くことが多いです。
その次は呉茱萸湯(ごしゅゆとう)ですが、こちらはそれほど効きません。
③上肢
上肢であれば、桂枝が入っている漢方薬が効きやすく、中では桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)が効くことが多いです。
④下肢
下肢であれば、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が効くことが多い、と言われていますが、あまり効かない印象です。
むしろ、八味地黄丸(はちみぢおうがん)の方が効きます。

2 “臓器”による選択法
これは完全に西洋医学に近い漢方薬の選び方です。
①神経による症状
神経には、五苓散(ごれいさん)です。
これはかなりよく効きます。
神経による症状には、いわゆる坐骨神経痛(本当は腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による痛み)のほか、手根管症候群、肘部管症候群、頸椎症性神経根症、頸椎症性脊髄症などがありますが、五苓散はこれら全般に効果があります。

②筋肉
筋肉の症状には、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が有名です。
しかしながら、芍薬甘草湯は漢方薬の有名な副作用である“偽性アルドステロン症”がもっとも出やすい漢方薬ですので、慎重に使用されることをおすすめします。
特に高齢の方はかなりの頻度で副作用がでるため、頓服以外ではすすめません。

③整形外科疾患全般
実は、整形外科疾患全般に効く、“魔法のような漢方薬”があります。
それが、治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)です。
腰痛からケガの痛み、手術後の痛みなど、整形外科全般によく効くため、僕も良く使っています。
ちなみに治打撲一方という名前は、「打撲などのケガを治す1処方」という意味なので、まさに整形外科用の漢方薬です。

3 それ以外の選択法
①天気
実は“天気が悪い”と症状が持続することがよくあります。
特に慢性疼痛という痛みが続いている状態ではなおさらです。
西洋医学の医師は「天気が影響する」というと、「そんなはずがない」と一蹴する方がいますが、経験上は良くあることです。
最近、いくつか天気による痛みの学説が出ているようですが、どうやら“気圧”の変化がその一因であるようです。
具体的にいうと、高気圧から低気圧になる際に痛みがひどくなるようです。
つまり晴れから雨に天気が“変わる”ときに症状が増悪します。
もっというと、雨や強風になる“前の日”に痛くなります。
一旦雨となってしまえば、症状は変わりません。

この天気の影響に効くことがある漢方薬が、五積散(ごしゃくさん)です。

②女性
実は、“女性”に良く効く漢方薬があります。
それが、加味逍遥散(かみしょうようさん)です。
ちなみに更年期障害にも良く効きます。

女性の妙薬としては、加味逍遥散のほか、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)がありますが、こちらはあまり効きません。

③イライラして怒りっぽい
イライラして怒りっぽいなど、怒りを外に向ける状態の時には、抑肝散(よくかんさん)が効くことが多いです。
抑肝散は、文字通り、肝(癇癪の“かん”のこと)を抑える漢方薬です。


エメラルド整形外科疼痛クリニック

札幌市北区で麻生駅に近接し、痛みに対して積極的に治療を施行(電話:011-738-0011)
・治療方針:「両極の治療」
・治療方針の解説:全国初の試みである『モデル症例報告』を通じて、わかりやすく詳細に解説
・特徴:多彩な独自の治療法漢方薬バイオフィードバックなど)
・リハビリテーション:理学療法士は担当制で、2単位40分で実施
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