骨粗鬆症①:椎体骨折のある骨粗鬆症

症例提示

年齢・性別:75歳、女性
主訴:背中がとても痛い
現病歴:昨日、路上で転倒し背中をうった。それ以来、ベッドから起きる時や、立ち上がろうとする時に背中が痛む。歩いているときにも痛む。
既往歴:高血圧で降圧薬を内服

状況からの医学的判断

転倒を契機に背部痛が出現しており、胸椎骨折がまず考えられます。
また、胸椎骨折のうち、圧迫骨折は下肢の神経症状(しびれ・痛み・筋力低下)が出現すことはありませんが、破裂骨折の場合には、神経症状が発生することがありますので、診察で評価することが必要です。
さらに、年齢、性別からは、骨粗鬆症となっている可能性が高いと考えます。

診断計画

まずはレントゲンで骨折の有無を評価することが必須となりますが、痛みがある背部(胸椎)のほかに、腰椎にも骨折がある可能性があるため、胸椎と腰椎のレントゲン撮影を行います。
骨折が確認できた場合、骨粗鬆症の診断が確定となり、骨の脆弱性の評価および骨粗鬆症の治療を開始することが望ましいため、患者様と相談の上、骨密度測定と骨粗鬆症用の採血を行います。

診断経過

レントゲン検査で、第12胸椎に圧迫骨折が確認されました。骨粗鬆症の診断となり、骨密度検査を施行した。
腰椎の%YAM値(骨密度の評価のために重要な値で70%以下では骨粗鬆症の診断となる)は、68%、大腿骨頚部の%YAM値は65%、total hipの%YAM値は69%でした。

診断名の確定

以上より、第12胸椎圧迫骨折、骨粗鬆症が診断名となります。

治療方針

・第12胸椎の圧迫骨折は、骨が治癒せずにつぶれてしまう(圧壊といいます)可能性があり、コルセットを作成し、3か月間装着することが強く勧められます。
・コルセットは以前はハードコルセットを作成しましたが、現在ではもっと柔らかいダーメンコルセットでも十分と考え、ダーメンコルセットを作成する。
・痛みに対しては、75歳と比較的若く、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往がないため、ロキソニン🄬とノイロトロピン🄬を処方する。
・歩行のふらつきがあったため、運動器リハビリテーションを1回/週、施行する。
・骨粗鬆症の治療のために採血検査(血清Ca値、腎機能、骨代謝マーカー、ビタミンD値、副甲状腺ホルモン値など)を行う。

治療経過

・コルセットが完成し、装着後4週間で痛みが消失したため、ロキソニン🄬とノイロトロピン🄬の処方は終了した。
・歩行のふらつきは続いていたため、6週間、運動器リハビリテーションを行った後、終了した。
・ダーメンコルセットは、3か月経過後に、徐々に装着時間を短縮し、2週間で完全離脱した。
・採血の結果、血清Ca値、腎機能、ビタミンD値、副甲状腺ホルモン値は正常で、骨代謝マーカーは正常回転型(骨形成正常、骨吸収正常)であったため、デノスマブ(プラリア🄬)とデノタスチュアブル🄬の使用を開始した。


補足事項

『モデル症例報告』は、代表的な疾患や患者様の代表的な状況を、検査内容、医師の判断内容、治療法などをわかりやすくモデル化することにより、「エメラルド整形外科疼痛クリニックの治療方針を知ってもらうため」に考案しました。
そのため、『モデル症例報告』の内容は、個々の患者様の実際の内容ではなく、同様の状況の患者様をモデル化した一般的な話です。


エメラルド整形外科疼痛クリニック

・札幌市北区麻生に開院している整形外科クリニック(電話:011-738-0011)
・治療方針は、「両極の治療」
・特徴は、多彩な独自の治療法漢方薬バイオフィードバックなど)
・2単位40分・担当制のリハビリテーションを施行
骨粗鬆症を積極的に治療
・院長は『骨粗鬆症治療の真実と7つの叡智®~超健康と長寿の秘訣~』を出版