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最近、痛切に感じていること
エメラルド整形外科疼痛クリニックでは、骨粗鬆症について悩んでいる方達の一助とため、クリニックでは『骨粗鬆症打開プロジェクト』による骨粗鬆症のエッセンスの解説を行い、クリニックに来院できない方達のためには、拙著『骨粗鬆症治療の真実と7つの叡智®~超健康と長寿の秘訣~』による啓蒙を続けてきました。
しかし、実際の医療現場で骨粗鬆症の患者様や骨粗鬆症予備軍(正確には骨減少症と言います)の方達の治療・啓蒙を行っている中で、最近、痛切に感じていることがあります。
それは、啓蒙をしているけれど、適切な運動を実際に開始する患者様が極めて少ないということです。
サイトリニューアルを開始する理由

骨粗鬆症治療ピラミッド
骨粗鬆症を改善するためには、生活習慣の改善が必要です。
骨粗鬆症治療ピラミッドが示すように、生活習慣の改善の中でも最も優先順位が高いものが、運動です。
運動の必要性・重要性については、『骨粗鬆症打開プロジェクト』や、拙著『骨粗鬆症治療の真実と7つの叡智®~超健康と長寿の秘訣~』の第12章『5.最上の薬』の章で解説しましたが、適切な運動を実際に開始する患者様が極めて少ないという現実がある以上、「運動」の重要性を伝えきれていないことが原因と考えました。
そのため、クリニックに来院された方だけでなく、広く日本全国の方に、運動の真価を詳しく知っていただきたいとの思いから、ホームページで運動の真価にについてを公開したいと考え、今回のサイトリニューアルを行いました。
サイトリニューアルの詳細
運動の真価
これから詳細にご紹介するように、身体だけでなく脳にも有効であり、さらに副作用がない。
これが運動の真価です!
運動の素晴らしい特徴
このホームページ上や、拙著『骨粗鬆症治療の真実と7つの叡智®~超健康と長寿の秘訣~』では、主に骨粗鬆症に焦点をあてて、運動の有効性をご説明しました。
しかし実は、骨だけでなく、運動は脳にも有効であることが、近年、続々と報告されています。
具体的には、運動は、①学業に有効、②うつ病を改善、③認知能力を改善、④加齢に抵抗、⑤認知症に有効であることが証明されています。
ここで大切なことは、運動は高齢の方だけではなく、
・学業に有効であることから、成長期の子供
・認知能力を改善することから、働き盛りの成人
に対しても有効であるという事実です。
つまり、運動は、病気であるかどうかについて関係なく、全年齢層に対して有益であるということです。
もちろん、うつ病や、骨粗鬆症やそのほかの生活習慣病にも運動は有効です。
運動には、副作用がない
運動には、もう1つ、素晴らしい特徴があります。
それは、適切な範囲の運動であれば、ほぼ副作用がないことです、
なお、適切な範囲の運動は、WHOの基準の2倍までが適切と考えられており、それ以上の運動は身体にとって害となる可能性がありますので注意してください。
アメリカ合衆国保険福祉省が公認している運動の効果
アメリカ合衆国保険福祉省が一般公開している運動の効果について、ご紹介します。
この報告では、エビデンスのレベルを、①強い、②強い~中程度、③中程度の3つの分けて評価しています。
骨については、③中程度のエビデンスとして有効であることが記載されています。
『2008 Physical Activity Guidelines for Americans』
①強いエビデンス
運動は以下のリスクを低下させる
- 人生の早い時期での死亡
- 心臓の冠動脈疾患
- 心筋梗塞
- 高血圧
- 高脂血症の副作用
- 2型糖尿病
- メタボリックシンドローム
- 大腸がん
- 乳がん
運動の上記以外の効果
- 体重増加の予防
- カロリー摂取の減少による体重の減少
- 心肺機能や筋力の改善
- 転落の防止
- うつ状態の改善
- 良好な認知機能
②強い~中程度のエビデンス
運動の効果
- 良好な機能的健康状態
- 内臓脂肪の減少
③中程度のエビデンス
運動は以下のリスクを低下させる
- 大腿骨頸部骨折
- 大腿骨転子部骨折
- 肺がん
- 子宮体がん
運動の上記以外の効果
- 体重減少後の体重維持
- 骨密度の増強
- 睡眠の質の改善
運動の「脳」への効果
前述のように最近研究報告では、運動は「脳」に有益であることが報告されています。
①学業に有効
②うつ病を改善
③認知能力を改善
④加齢に抵抗
⑤認知症に有効
以下で順にご紹介します。
①学業に有効
・医学生を対象とし、エアロバイクを30分間、60~70%の予備心拍数で1回だけ運動を施行した
結果:記憶力、推理力、計画力が向上し、作業時間が短縮
Nanda B et al. J Clin Diag Res, 2013.
・10歳前後の男女を対象とし、最大心拍数の60%で、20分間の歩行を1回だけ施行した
結果:反応の速さと正確性、言葉の読み書きの正確性が向上
Hillman CH et al. Neuroscience, 2009.
②うつ病を改善
・軽度から中程度のうつ病患者を対象とし、70~85%の予備心拍数でウォーキングやジョギングを1回30分、週に3回、16週間施行した
結果:運動とSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬:うつ病に有効な有名な薬)は同等の効果
Blumenthal JA, et al. Arch Intern Med, 1999.
・うつ病患者を4群(①自主的に運動をする群、②指導下に運動をする群、③SSRI使用群、 ④何もしない群)に分け、調査を施行した
なお、運動は、最大心拍数の70~85%でウォーキングやジョギングを1回30分、週に3回、16週間施行
結果I:うつ病が寛解した確率が、①・②・③・④で各々、40%・45%・47%・31%
結果II:運動した群(①と②)はSSRI群(③)と同程度の効果があった
Blumenthal JA, et al. Psychosom Med, 2007.
・運動を継続することにより、再びうつ病になってしまう確率が低下する
Babyak MA, Blumenthal JA, et al. Psychosom Med, 2000.
Hoffman BM, Babyak MA, Blumenthal JA, et al. Psychosom Med, 2011.
・20~45歳のうつ病と診断された患者を5群(①7.0 kcal/ kg/ weekで週に3回運動する群、②7.0 kcal/ kg/ weekで週に5回運動する群、③17.5 kcal/ kg/ weekで週に3回運動する群、④17.5 kcal/ kg/ weekで週に5回運動する群、⑤運動をしない群)に分け、調査を施行した
結果I:③④は、うつ病の症状が47%改善し、統計学的に有意差があった
結果II:①②は、うつ病の症状が30%改善したが、運動をしない群⑤の29%と統計学的に有意差はなかった
結果III:週3回と週5回の群では、統計学的に有意差はなかった
Dunn AL. et al. Am J Prev Med, 2005.
③認知能力を改善
認知能力とは、わかりやすくいうと、認識能力のこと
高齢になり「認能力」がかなり低下すると、「認知症」となる可能性がある
「認知症」にならないために、運動を継続することが重要。
・65~85歳の高齢者の有酸素運動能力と、認知能力(注意力・空間認識・記憶能力・実行機能)の関係と調査した
結果:中程度の有酸素能力の群は、低い有酸素能力群と比較し、統計学的に有意に全ての認知能力が高い
Netz Y at al. Int Psychogeriat, 2011.
⇒「有酸素運動能力が高いと、その時点での認知能力が高い」ことを意味する
・55歳以上で有酸素能力を調べ、6年後の認知能力を調査した
結果I:有酸素能力を計測した時点では、認知能力に統計学的な有意差はなかったが、6年後には、低い有酸素能力の群は、高い有酸素能力の群と比較し、統計学的に有意に認知能力が低下していた
Barnes DE et al. J Am Geriatr Soc, 2003.
⇒「有酸素能力が低い場合には、将来的に加齢により認知能力が低下しやすい」・「有酸素能力が高い場合には、将来的に加齢による認知機能の低下をある程度抑えることができる」ことを意味する
・1966年~2009年に発表された論文の中から、信頼性の高い29の報告、2049人のデータ報告をメタ解析した
結果I:有酸素運動をすることにより、注意力・情報処理速度・実行機能・記憶能力などの認知機能が向上する
結果II:運動については、70%最大酸素摂取量の強度で、週3日が推奨される
Smith PJ et al. Psychosomatic Med, 2010.
⇒「有酸素運動をすることにより認知能力が向上する」ことを意味する
④加齢に対抗
「脳が萎縮する」とは、「機能が低下する」ことを意味する
前頭葉は認知能力に関係し、側頭葉は記憶能力に関係するため、前頭葉と側頭葉が萎縮すると、認知能力や記憶能力が低下することになる
この状態が進行すると、「認知症」となる
海馬は高齢になると1年に1~2%小さくなることが報告されている
・60~79歳の高齢者が、6か月間、有酸素運動を1回60分、週3日行った
結果I:脳が統計学的に有意に大きくなった
結果II:運動をしないと、変化はなかった
Colcombe SJ et al. J Gerontol Med Sci, 2006.
・55~80歳の高齢者が、12か月間、有酸素運動を1回40分、週3日行った
結果I:海馬は12か月で2%大きくなった
結果II:運動をしないと、12か月で1.4%小さくなった
Erickson KI et al. PNAS, 2011.
・65~85歳の高齢者で有酸素運動能力と認知能力を調査した
結果:有酸素能力が高いと、全ての認知能力が統計学的に有意に高かった
Netz Y at al. Int Psychogeriat, 2011.
・55歳以上の高齢者で、6年後の認知能力を調査した
結果:有酸素能力が低いと、認知能力が有意に低下していた
Barnes DE et al. J Am Geriatr Soc, 2003.
・29の論文をメタ解析した
結果:有酸素運動をすることにより、認知機能が向上する
Smith PJ et al. Psychosomatic Med, 2010.
⇒「有酸素運動を継続することにより、加齢による脳機能の低下に対抗できる」ことを意味する
⑤認知症に有効
・65歳以上でまだ認知症になっていない高齢者が、5年後にアルツハイマー型認知症になるリスクを調査した
結果:運動をすると、リスクが33~50%低下した
Laurin et al. Arch Neurol, 2001.
・71~93歳の高齢男性を対象とし、1日の歩く距離と認知症になるリスクを検討した
結果:歩く距離が短くなると、最高1.93倍、認知症になるリスクが高まった
Abbott RD et al. JAMA, 2004.